研究概要 |
ピボタル・メカニズムは理論的には真実表明が高い割合で観察されると期待されているが,固定規模の公共プロジェクト実施の可否決定問題に適用されるピボタル・メカニズム(離散型P脳)に関する実験研究では低い真実表明率しか得られていないことが過去の研究によってわかっている。本研究の目的は,連続的に変化しうる公共プロジェクトの規模決定問題に適用したピボタル・メカニズム(連続型PVM)に関する需要表明実験を実施し,意思決定主体が戦略の選択とその結果得られる利得とのフィードバックに基づく学習過程を経ることによって、真の需要表明が支配戦略であることを見出し,ピボタル・メカニズムの真実表明が高い割合で観察されるとする理論的期待が実証的に裏付けられるか否かを検証することである。 離散型PVMでは,支配戦略を選択しても他の戦略を選択しても利得が同一となるフラットな利得構造部分が存在する。そのため,自己と他の主体の様々な戦略の組合せの下での利得を試行錯誤的に探索し,支配戦略を見いだそうとする意志決定主体にとって,支配戦略を見出すことは困難であると考える。本研究では,フラットな部分のない利得構造を実現するため,戦略の範囲を真のパラメータ値を含む比較的少数の値に限定し,ピボタル・メカニズムの利得関数がsuperm。dularityを満たすよう実験モデルを設計し,試行実験を行った。 離散型P四実験では,探索により真実表明が支配戦略であることを認識できたと判断できる被験者は全体の4割弱にとどまるのに対し,連続型P脳実験では,探索により真実表明が支配戦略であることを認識できたと判断できる被験者は全体の7割強に達することがわかった。このような実験結果は,フラットな部分を持たない連続型PVMの利得構造が意志決定主体の探索行動による支配戦略の認識を容易にするというわれわれの見解の妥当性を実証している。
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