研究概要 |
昨年度は,労働人口の地理的移動を記述する複雑系数理経済モデルを構築したが,本年度は,昨年度までの研究成果を発展させて,数理人口移動論で懸案であった人口移動現象一般を記述するマスター方程式の解を表示するために,クラマース・モイヤル展開における剰余項の評価を試み,その広汎な評価式を得ることができた.その成果を論文にして“Nonlinear Analysis"に発表した.この剰余項評価方法は適用範囲が広く,人口と資本の地理的移動現象を表す非線形拡散方程式の解の差に評価を与えるものである.また,年齢構造のポピュレーション・ダイナミックスのモデルへの組み込み方法を検討し,人口減少の効果と年齢構造の両方が組み込まれた力学系の漸近挙動を数値解析的手法によって体系的に調べた,特に人口減少の効果の年齢構造による積み重なりの結果生じるエージェントの挙動の不安定化が,どのようなオーダーで起きるのかを,力学系の漸近挙動の数値解析的手法を用いて体系的に詳しく調べた.これは,数値実験により,年齢構造との効果を決定するパラメーターの値を変化させ,エージェントの挙動の不安定化が起きないパラメーターの範囲を推定した.この成果は,学術雑誌に投稿中である.さらに,人口減少と経済成長との関連で,中華人民共和国の計画生育法(人為的な少子化)が経済に与えた影響を研究した。その政策は所得の地域格差を生み出すとともに,社会問題も起こしていることが判明した.この研究成果は東海大学総合経営学部紀要に発表した。
|