一般に制度の経済学や比較制度分析の特徴は、その制度や慣習の成立を出来る限り純粋に経済学的モデル=経済学的ロジックの範囲内で行おうとすることであり、それゆえにその分析から出来る限りそれぞれの共同体特有の歴史や文化といった要因を排除しようとすることであると言える。じっさい、制度や慣習の成立を純粋に経済学的なロジックによって形式的に説明できるようになったということ、このことこそが新制度派の経済学や比較制度分析の最大の貢献なのである。だが、われわれが今年度研究したコンヴァン書にストの立場を採用すれば、新制度派の経済学や比較制度分析が、その分析からそれぞれの共同体特有の歴史や文化といった要因を排除出来るのは、それがコンヴァンショニストの言う戦略的コンヴァンションの分析にとどまり、戦略的コンヴァンションが解釈的コンヴァンションに依存していることを見落としているからに他ならない。コンヴァンションの経済学は、ある意味では、新制度派の経済学や比較制度分析を、戦略的コンヴァンションの分析に特化した特殊ケースとして含みうるような、より広いパースペクティブを持った制度の経済学の一般理論といえるのである。
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