研究概要 |
4年計画の最終年度として,LSEの行政学的経済思想の研究を仕上げるために,これまでの研究成果をまとめることを今年度の研究の目的としていた。具体的な研究実施計画としては,R.H.トーニーの社会思想の再検討を中心に,イギリスに独自の「ケインズ主義の複合体」,すなわちケインズ的内需主導型成長モデルとイギリス労働党の経済思想との癒着が,イギリス福祉国家のガバナンス構造を無力化し,読争力の低下を招いた点を明らかにすることであった。実施にあたっては,研究途上において,こうしたイギリス福祉国家の側面をえぐり出すには,イギリス一国のみならず,スウエーデン福祉国家との比較が重要であるという知見を得た。具体的には,レーン・メイドナー・モデルに代表される開放経済下での国際競争力の強化策として,福祉国家が構想されていたスウエーデン・モデルは,LSEの創設者であるウェッブ夫妻の国民的効率構想を体現したものである可能性が大きいことを明らかにした。
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