平成20年度の研究はケンブリッジ学派におけるレイトンの位置づけとして、彼の最初の著作である『物価研究入門』を中心に検討を行った。その研究成果を「ケンブリッジ学派におけるウォルター・レイトン-『物価研究入門』(初版)を中心として-」(Discussion Paper New Series No.2007-2、大阪府立大学経済学部、2007年8月)にまとめた。 論文では、レイトンに注目することは、ケンブリッジ学派の形成過程ならびにピグーやケインズとは違うケンブリッジ学派の経済学分野も明らかにできるのではないかという問題提起を行い、分析・考察を行った。その結果明らかになったことは、レイトンはマーシャルから帰納法的な研究方法論を学び、それを新たな理論構築や経済分析道具の貢献に発展させるのではなく、当時に重要になりつつある統計分析に自らの能力を活かしたのである。レイトンがマーシャルから引き継いだ帰納法並びに統計分析はマーシャル自身が初期から持ち続けていたものであり、自らの体系の中で十分に展開できなったものが弟子たちによって継承されていったのである。したがって、本年度の研究ではケンブリッジ学派におけるレイトンを、マーシャル経済学の伝統を受け継ぎ、「応用経済学」の分野に業績を残した経済学者として位置づけることができた。 第43回経済社会学会全国大会(2007年9月22・23日神戸大学)において、上記のタイトル内容で報告を行った。 さらに、ケンブリッジ学派におけるレイトンの位置づけに関する英語論文'Alfred Marshall and Walter Layton on the Cambridge School'を作成(投稿先検討中)し、"International Workshop:Marshall and Marshallians on Industrial Economics"(2008年3月15・16日一橋大学)において報告を行った。同名タイトルの論文を、2008年5月15日〜17日プラハにおいて開催されるヨーロッパ経済学史学会(ESHET2008)において、報告を予定している。
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