研究概要 |
平成20年度の研究は,レイトンの主要著作である『物価研究入門』と『資本と労働の諸関係』につていて研究を行った。最初の著作を中心に研究成果を,「ケンブリッジ学派におけるウォルター・レイトン-『物価研究入門』(初版)を中心として-」(『経済社会学会年報』,第30巻,2008年,pp.113-123)としてまとめ発表した。本稿では統計という分析手法によるレイトンの『物価研究入門』は,ケンブリッジ学派において異質のように見えるかもしれないが,マーシャルの経済学方法論を踏襲し,当時重要な研究テーマである物価研究を行った業績であることを,上記論文では明らかにした。 さらに,マーシャルが十分に具体化できなかった応用経済学の業績であることも述べた。 さらに,平成20年(2008年)5月に開催された12th ESHET(ヨーロッパ経済学史学会)において報告を行った。本報告をもとに,`Layton on Industrial and applied ecnonimics'をT.Raffaelli,T.Nishizawa,S.Cook Marshall,Marshallians and Industrial Economics,Routledge Economics2010年2月刊行に投稿予定である。 レイトンの『物価研究入門』と『資本と労働の諸関係』をもとに,ケンブリッジ学派における位置づけならびに彼の労働者論を,第8章「レイトン」,平井俊顕編著『市場社会論のケンブリッジ的展開』,2009年6月,日本経済評論社に掲載予定である。レイトンは,マーシャルから帰納法的方法論学び,それを新たな理論構築,分析道具の発展に貢献したのではなく,当時重要になりつつ統計分析に自らの能力を活かし,その成果をまとめたものが『物価研究入門』であることを明らかにした。また,マーシャルの労働問題への関心を引き継いだ書物が『資本と労働の諸関係』であると評価した。 レイトンは労働と資本の協同の必要性を強調していることからマーシャルから継承であることを指摘した。これまでの研究からケンブリッジのレイトンは,マーシャルが創設した経済学トライポスから生まれた経済学者であり,応用経済学の分野において業績を残した人物であること明らかにした。
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