研究概要 |
日本18世紀学会の共通論題「『百科全書』研究の新地平」において、「『百科全書』イタリア版よついて-オーベールの手紙から-」という報告を行った。『百科全書』イタリア版は、ルッカ版とリヴォルノ版があるが、報告では直接にはリヴォルノ版の出版事情に焦点をあてた。その成果は、直接には(1)リヴォルノ版は、トスカナ大公レオポルトの庇護の下におこなわれたから、トスカナ大公国の政治と文化の関連についての見通しが得られたこと、(2)奢侈については、『百科全書』の当該項目の重要性が確認できたこと、(3)18世紀イタリアで例外的な繁栄する国際貿易都市というリヴォルノの独自性が、出版の企画者オーベールの出自、活字や用紙の外国からの調達などの面から明らかとなったという3点である。さらにリヴォルノ版の出版はルッカ版やイヴェルドン版(スイス)と競合関係にあったから、副産物として、ルッカ版については、リヴォルノとは対照的に、18世紀においても独立を保っていたルッカ共和国の独自性、ルッカ版の出版者は宗教改革にさいしてローマ教皇庁の弾圧をうけてジュネーヴへ移住した名門貴族の同族であったこと、イヴェルドン版の出版者もまた、結婚問題を契機たナポリからスイスへ逃亡し、カトリックからプロテスタントに改宗したという経歴を持つことが確認された。 以上のように18世紀イタリアという視角からは、時間的空間的に広範囲な見通しが得られることが確認され、奢侈論については習谷の腐敗という論点したがって実践道徳の基盤としての宗教と密椄な関連を持つという事実が明らかとなった。この点との関連は、ともにイタリアを舞台とする大黒俊二とWill Wahnbaeck,の著書の書評において留意したところである
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