計量経済学を用いた実証研究において、誤差項の分散が観測値毎に一定ではないことがよくある。もしも従来の枠組みで全く分散構造をモデル化しなければ、推定すべき分散構造のパラメーターの数が標本の大きさと同じ速度で増加してしまうので、推定はできない。これが分散構造パラメーターの識別不能性である。この理由から既存の分散不均一性に関する研究は検定であれ、不均一分散構造の推定であれ、何らかの構造を仮定している。これに対し我々の提唱する枠組みは、分散構造を一切モデル化しない。では、なぜ我々の枠組みでこれが可能になるのだろうか?第一点は、標本理論において非常に有名なホワイトの回帰係数の最小二乗推定量に関する頑健推定量(以下HCCMと略)を分散構造推定に使用できる回帰モデルと見た点にある。第二点は、回帰モデルの中の全ての変数(従属変数を含む)に直交する変数を生成することで、識別性の問題を克服した点にある。第三点目は、ベイズ的枠組みを使用する点にある。我々の提唱するベイズ的不均一分散推定方法は、以上の3点からしても画期的な方法である。 我々は、以上のような特徴を備えたモデルの推定方法を確立した。この論文をより完成度の高いものにするには、海外の学会で成果を発表しコメントを得て、日本語と英語で既にDiscussion Papersの形で公表している本論文をさらに高度化し、計量経済学の査読制度付きの主要なジャーナルへの掲載をねらうこととする。
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