本研究では確率場で表される計量経済モデルの停止時を用いた推測について考察する。具体的な研究テーマは次の4つである。(1)時系列の単位根のモニタリング問題、(2)金融資産価格のボラティリティのノンパラメトリック推定、(3)確率場として表される利子率の期間構造モデルの推測、(4)を導入したベンチャー企業の多変量生存時間分析。停止時を用いた統計的推測の方法は、統計的逐次解析理論とよばれ、その実用的意味は、データの観測が現実の時刻の推移とともに徐々になされていく場合、適切な時刻でサンプリングをいったんやめ、推測を行うというところにある。通常の経済モデルの統計的推論では、過去のデータがすでに与えられている場合か、アンケート調査のようにいっせいにデータが得られるといった場合で、停止時が推測に用いられることはない。しかしながら、経済モデルの解析でも、オンラインで観測過程をモニタリングしている状況においては、停止時を用いた推測に意義があると考えられる。本研究では上記の4つの問題で、(1)パネル時系列、(2)金融資産価格、(3)利子率の期間構造、(4)ベンチャー企業の生存時間、のそれぞれをオンラインで観測する状況を考え、停止時を用いた統計的推測を考察する。 19年度においては特に(1)と(2)について実績を残した。(1)については"Sequential Unit Root Test"と題して、いくつかの国内外の学会にて報告を行った。また(2)についても国内学会での報告を行い、また海外査読雑誌に掲載が決定した。
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