多変量分布を幾何学的なアプローチからとらえることが、今回の目標の一つであるが、それに関して、次のような研究を行った。 1)微分幾何の基本的な理解:微分幾何の入門書("An Introduction to Differentiable Manifolds and Riemannian Geometry" W.M.Boothby)を読み終わった。 2)微分幾何の統計学への応用:微分幾何の基本的な概念を統計学に応用した成果は、既にいくつかの研究書・モノグラフにまとめられているが、そのうちの一つ("Differential Geometry and Statistics" M.K.Murray & J.W.Rice)を読み始めた。現在、半分ほど読み終わったところである。 3)リーマン幾何の基本的な理解:幾何的なアプローチの中でも、特に統計学への応用の観点から重要なのは、リーマン計量を用いたリーマン幾何学の応用である。リーマン幾何の入門書(「リーマン幾何学」加須栄篤)を読み始めた。現在4分の1ほど読み進んだ。 4)分散共分散行列が、時系列に沿って変化しているときに、その動きを幾何的に捉え、予測に生かせないかを研究した。具体的には、直交行列群の測地線にそった移動を考えることで、よりよい(あるいは数学的に自然な)予測が可能になるのではないかと考えている。 5)母数パラーメーターが無限に拡散した極限状態における散共分散行列の分布の挙動についての結果を論文にして発表した。
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