多変量分布を幾何学的なアプローチからとらえることが、今回の目標の一つであるが、それに関して、次のような研究を行った。 1)微分幾何の統計学への応用:微分幾何の基本的な概念を統計学に応用した成果は、既にいくつかの研究書・モノグラフにまとめられているが、そのうちの一つ("Differential Geometry and Statistics" M.K.Murray & J.W.Rice)の約三分の二を読み終えた。 2)リーマン幾何の某本的な理解:幾何的なアプローチの中でも、特に統計学への応用の観点から重要なのは、リーマン計量を用いたリーマン幾何学の応用である。リーマン幾何の入門書(「リーマン幾何学」加須栄篤)を読み終えた。 3)信州大学全学教育機構の高野嘉寿彦教授と、経済データの情報幾何的アプローチに関して共同研究を行った。高野教授が求めたAR(1)過程の情報幾何的性質、特に測地線の解を利用して、経済データの動学的な変化をうまく解析できないかを試みた。具体的には、以下の二点の研究を行った。 3-1)株価指数の日次・月次データ存対数変換後、差分をとったものをAR(1)にあてはめ、AR(1)のパラメーターがいくつかの時間帯で、どう変化しているかを観祭し、それらか測地線にそった動きをしていないかどうかを見てみた。残念ながら、測地線にそった動きはしていなかった。 3-2)上記の分析で使った自然なパラメーターを等長変換によって通常の二次元ユークリッド平面に変換した後で、モデルの時間的な変化を見出す作業を行って見たが、特徴的な動きは見られなかった。
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