本研究は、この無限次元の局外母数を推定する必要がある場合の方が、無限次元の局外母数がわかっている場合よりも興味があるパラメータの推定量の分散が小さくなるという不思議な現象を解明する。この推定量の分散の逆転現象を分析する既存の研究では、局外母数が有限次元の場合のみを対象にしていた。 近年、密度関数のノンパラメトリック推定量、回帰関数のノンパラメトリック推定量という無限次元の局外母数を持つセミパラメトリック推定量が数多く開発されてきた。その中で、直感とは反することであるが、無限次元の局外母数を推定した方が、局外母数がわかっている場合よりも興味のあるパラメータの推定量の分散が小さいという分散の逆転が見いだされてきた。 本研究ではそれを、いままで有限次元の場合のみを考えていたものを、無限次元の場合にまで拡張しノンパラメトリックに関数を推定する必要のあるセミパラメトリックモデルにおいても適応可能なものとすることを目標とする。21年度は分散の逆転が起こる十分条件をセミパラメトリックサブモデルの局外母数のスコアで張られる接平面(tangent space)と興味のあるパラメータのinfluence functionの関係で表し、分散の逆転が発生する必要十分条件を導出した。
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