研究概要 |
今年度は,研究実施計画にもとづいて,データの整理,空間的な相互作用を取り入れた確率フロンティアモデルの開発,提案した計量モデルに対するマルコフ連鎖モンテカルロ法の開発の3点を中心に研究を行った.平成19年度における研究成果は以下の通りである: 1.本年度の研究に必要なデータ(都道府県レベルのデータ)を収集・整理した. 2.空間的な相互作用を考慮した計量モデルの開発では,経済活動の非効率性を測定する際によく用いられる確率的フロンティアモデルを取り上げその拡張を行った.具体的には,各経済主体の非効率性は自身の非効率性だけでなく他の経済主体の非効率性にも依存する確率的フロンティアモデルの開発を行った.提案するモデルでは,他の経済主体の非効率性は作成した重み行列にしたがってモデルに組み込まれることになり,既存モデルは本研究で提案するモデルの特殊な場合となる.また,本研究でのモデルを都道府県の支出関数の推定に応用した. 3.2.で提案したモデルに対して,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法による推定効率の改善に関する研究を行った.モデルの推定については,空間的相互関係と非効率性の非負性という構造から,通常のMCMC法による推定では非常に収束が遅いことを明らかにした.そこで,本研究では新たなサンプリング法として,逐次的に切断された正規分布を提案分布とする新たなMCMC方法の開発を行った.その結果,本研究で提案する推定方法はこれまでの推定方法よりも収束や推定精度においても改善されることを明らかにした.これらの研究成果については,現在論文としてまとめているところである.
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