研究概要 |
今年度は,研究実施計画にもとづき,データの整理,空間的相関構造を取り入れた計量モデルの開発,提案した計量モデルに対する効率的な推定方法の開発,これら3点を中心に研究を行った.平成20年度における研究成果は以下の通りである: 1.本年度の研究に必要なデータを収集・整理した.また,関連する既存研究の文献調査を行った. 2.昨年度,空間的相関構造を持つ確率的フロンティアモデルの開発を行った.本年度は,この計量モデルの説明力を向上させるため,モデルのさらなる改善を行った.具体的には,確率的フロンティアモデルの特徴である非効率を表わす変数を,重み行列を利用して独立な確率変数の線形結合として表わすことにより,新たな形で空間的相関構造を確率的フロンティアモデルに導入した.また,提案する計量モデルに対して,モデル選択基準の計算方法に関する研究も行った.本年度開発した計量モデルを用いて都道府県の支出関数を推定し直したところ,既存モデルよりも説明力が改善されることが確認された.これらの成果は,国際会(CFE'08)において報告をした. 3.新たな時空間計量モデルを開発するために,時系列解析でよく用いられているマルコフスイッチングモデルに対して空間的相関を取り入れることを試みた.本研究の特徴は,空間的な相関を持つ変数を直接モデルに組み込むのではなく,マルコフスイッチングモデルのウェイトを領域にしたがって変化させることによって空間的相関構造を取り入れている点である. 4.3.で提案したモデルに対して,マルコフ連鎖モンテカルロ法による推定方法の開発を行った.本研究の成果の一部は雑誌論文としてまとめ,日本経済学会においても報告を行った.
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