研究概要 |
ストック=ワトソン指数のような最近の景気指数は景気指標に1因子モデルを仮定する.その仮定を検定する手法を提案したのが本年の研究成果の1つである.因子構造は景気指標の自己共分散行列に制約を課すので,共分散構造分析あるいはGMMの手法が適用できる.それにより1因子構造の仮定を検定できるとともに,それが成立する場合には,ストヅク=ワトソン指数より頑健な景気指数が求められる.それはまたストヅク=ワトソン指数と従来のCI(コンポジット・インデックス)との関係を明らかにする.アメリカの一致CIを構成する4指標に適用したところ,1因子モデルは成立しないとの結果が得られた.これは景気指数に関する近年の研究の方向性に大きな疑問を投げかける結果である. 都道府県別景気指数の作成方法を提案したのがもう1つの研究成果である.現在のところ各都道府県はまったくばらばらに景気指数を作成している.都道府県別景気指標の利用可能性を考慮して統一的な景気指標を選ぶとともに,その合成手法として主成分分析を提案した.またすべての都道府県について同一の景気指数を作るためには,データの整備が大きな課題であることも明らかにして.さらにその際に特に日本では景気の定義に大きな混乱が生じていることを指摘し,2種類の指数を作成することで混乱を整理することを提案した.この「景気水準指数」「ギャップ指数」は内閣府からも関心をもたれ,「景気動向指数に関する研究会」委員に招かれ,報告書のとりまとめに参加する機会を得た.
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