研究概要 |
マクロ経済学の「新しい新古典派総合(new neoclassical synthesis)」においては,伸縮的な価格・賃金の下でのマクロ経済変数の均衡値を「自然率」,価格・賃金の硬直性によって生じる実際の値と自然率との差を「ギャップ」と定義する.硬直的な価格・賃金の下での物価水準の変動は,相対価格を歪ませ,市場の資源配分を非効率にする.そのため物価の安定は中央銀行の第1の政策目標とされる.将来の物価・インフレ率は現在のギャップに依存する.したがって中央銀行は両者を注視して金融政策を運営する(例えばテーラー・ルール).ただしギャップは観測されないので推定が必要となる.そのため近年は自然率/ギャップの推定の研究が盛んになっている.特に注目されるのは複数のマクロ経済変数の自然率/ギャップの同時推定の研究である. 産出量(実質GDP)が四半期系列なので,自然率/ギャップの推定値も通常は四半期系列となる.しかしリアルタイムのギャップでなければ金融政策の運営には役立たない.そこで本研究では月次GDPギャップの推定を試みる.また自然率/ギャップの推定誤差が大きい場合,点推定値を過度に信頼するのは危険である.そこで本研究では自然率/ギャップをベイズ推定し,ギャップの事後分布に基づくギャップ確率指数を提案する.
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