本研究の目的は、発展途上国の福祉向上のために政府機関によって供与される開発援助が効率的に配分されているかどうかを調査し、援助供与国の評価および援助配分の改善のための情報を得ることである。前年度の平成19年度においては、援助プロジェクトを分野別に集計し、各分野内の援助配分について調査を行ったが、平成20年度においては、前年度に集計した分野別のデータを再度整理し、被援助国において援助の分野間配分が開発における優先順位と一致しているかどうかを調査した。 前年度に行った分野内配分の効率性の結果とは異なり、被援助国内の分野間配分については適切であるという証拠はほとんど得られなかった。具体的には、ドナー全体および各ドナーの援助について、援助の分野間配分が被援助国内の分野間の相対的な必要度を反映しているという結果は得られなかった。 援助の分野間配分が適切でない理由を明らかにするため、被援助国の特徴によって分野間配分の効率性が異なるかどうかについても調査した。東アジアの中高所得国のデータを用いた場合のみ、必要度指標が援助配分に影響を与えているという結果が得られた。さらに、被援助国における汚職の程度や政府の質というガバナンスの違いが配分の効率性に影響するかどうかについて調査したところ、汚職および政府の質の指標が下位10%の被援助国において、援助が必要な分野でより少なく、不必要な分野でより多く配分されているという結果が得られた。これらにより、援助の分野間配分には被援助国のガバナンスが影響していることが明らかとなった。
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