本研究の目的は、発展途上国の福祉向上のために供与される開発援助資金が効率的に配分されているかどうかを調査し、援助配分の改善のための情報を得ることである。平成19年度から20年度は、プロジェクト・レペルのデータを分野別に集計し、各分野の被援助国間配分および各被援助国の分野間配分が適切であるかを調査した。平成21年度以降は、どのような国でどのような援助配分が望ましくなるかを説明する理論モデルを開発し、過去に行われた援助がどの程度適切であったかの評価を行った。 平成22年度は、前年度に開発したモデルを改良し、援助の有効性を決定する要因を明らかにした。具体的には、公共投資を決定する目標成長率、政府の効率性、所得税率、貧困レベルを明示的に用い、それらが援助の有効性にどのような影響を与えるかを調べた。得られた主な結論は、ある程度高い目標成長率によって援助期間が短縮され1ドルあたりの援助の効果が大きくなること、援助期間を短くし1ドルあたりの援助効果を最大にする税率が存在することである。また、ガバナンスの指標として導入した政府の効率性が向上した場合に援助の有効性は高まるが、その効果は目標成長率の効果に比べて非常に小さいため、援助の有効性の向上の観点からガバナンスが良好でない国への援助を控えることは望ましくないという政策的含意が得られた。アジアの主要な被援助国のデータをもとにパラメータを特定化して日本の援助の評価を行ったところ、援助の効果は必ずしも援助額に比例せず、貧困レベルや成長率に依存することが示された。成長率が低い国では1ドルあたりの援助の効果は小さくなることが示されたが、それらの国への追加的な援助は大きな効果を持つ。したがって、低い成長率の国での経済インフラへの援助が最も援助の有効性を高めることが政策的含意として得られた。
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