日本の貿易における価格調整面の問題について、第1に、契約通貨の決定の分析とともに品目別に統計的検証を行った研究成果を査読付学術誌に掲載した。以前、学会で発表したものを改訂し、当該学術誌に投稿したところ、査読者からのコメントを新たに受けさらに改訂したものである。特に、実証分析の手法に関する説明をより詳細化している。第2に、貿易と国内物価の観点に頂点を当てた研究について、本学の研究会で発表を行った。参加者との議論の中で、現在の日本のデータに関する研究を、外国のデータで当てはめ、価格変動の性質についてさらに検討する意義があるとの認識に至った。 一方、貿易の量的調整面としては、貿易収支におけるS/Jカーブ現象について、今までの研究の継続を含め、実証分析を行い、ディスカッションペーパーにまとめた。特に、S/Jカーブの形状は、1980年代と2000年代では異なってきており、この点を、作成したプログラムによる安定性テストで確認した。さらに、貿易相手国別の分析も行い、対米貿易から対中貿易への相対的重要性が増してきていることが、S/Jカーブの形状の変化につながっていると結論付けた。 所得収支については、GDPとGNIのギャップの観点から研究を進めた。日本の場合、このギャップが、対GDP比で、1980年代初めには0%であったが2007年では3.3%になってきており、その多くが所得収支の増大であることを確認した。そして、国際収支発展段階説の視点から、日本が成熟債権国に移行する可能性が高いとともに、政府の財政問題がこの移行にどのような影響を与えるのかを検討した。この研究は査読付学術誌に掲載した。
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