研究概要 |
「テーマC知財アクセス組織の比較経済分析」を"Collective Rights Organizations and Investment in Upstream R&D"の完成で終了した。 組織による上流技術インセンティブと社会厚生を比較した。具体的には補完的な技術(A,B)の開発を別々の企業が行う場合に、パテントプール(PP)の存在(加盟するか否かも内生的)、PPの形態、技術開発後(事後)のライセンス状況と、技術開発への投資(事前)の関係を分析した。 PPの形態として1)ライセンス収入の分配が均等2)ある企業の加盟を促すために分配を優遇3)PP構成員が競争法で制限されている、の3種類を比較した。PPが存在しない場合とも比較した。 分析の結果以下が明らかになった。(1)PPは一般的に上流技術への投資を促進する。しかし、(2)A,Bどちらかの一方の技術開発が独占(1企業しか開発能力がない)の場合は、独占企業のインセンティブを減少させる。これは、PPがライセンス収入を分散させることになるからである。(3)PPがあることによって、企業が社会的には過剰投資をする場合がある。(4)優遇分配は、PPへの加入を促し、それが事前投資インセンティブによい効果を与えるので、社会厚生を増加させる。(5)1つの企業でもPP形体の順位づけ(利益の順番)が、事前と事後の市場形体によって、異なる。これは、PPのあり方について、メンバーが技術開発過程によって、合意できなくなることを明示している。 政策的含意として、(5)から、企業のインセンティブと社会厚生への影響が技術開発の種類(成功の確率分布)に依存するので、PPに対する政策は対象産業や技術を考慮する必要があることが分かる。
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