最終年度に当たる今年度は、昨年度に分析を進めたブラジルアマゾンの群レベルデータに基づくDEA(包絡分析法)による技術変化に関する論文を完成させた。各生産物(単年性作物、多年性作物、畜産物)別に1975、1985、1995年の3つの年に対して推計した。従来のMalmquist生産性指数では、1985年の技術水準が最も低く、1995年が最も高くなるのに対して、本研究では対象期間全体では2%前後の技術進歩が観察されたが、1985年の技術水準が最も高く1995年にかけて技術水準がやや低下することが分かった。ケニアの家計データを用いた持続的農業の採択の分析においては、環境保全型農業への移行を促進する要因の分析を完成させ論文にまとめた。結果から、傾斜など不利な生産環境にある農家ほど、また所得にゆとりのある農家ほどアグロフォレストリーや他の土地改善施策を採用することが分かった。さらに、アグロフォレストリーなど土地改善施策を採用した結果、農業生産性が実際に改善したか同じデータを用いて分析を行い、論文にまとめた。結果は、アグロフォレストリー、テラス、化学肥料、堆肥について主要穀物の全要素生産性を高める効果が計量的に示された。また、自己選択によるバイアスも考慮したところ負のバイアスが観察され、これは不利な生産環境におかれ潜在的に生産性の低い農家ほどアグロフォレストリーを採用するためであると説明できよう。
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