研究概要 |
本研究の目的は国内製品から輸入品への大規模な需要シフトが起こる状況では需要シフトダンピングと呼ぶことのできるダンピングが引き起こされることを示すことにある。 平成19年度においてはYano and Dei(2005,2006)に基づき、外国企業の直面する需要曲線が椅子の形をしていることを明らかにした。まず、一つの市場だけを取り上げ、外国製品がその市場すなわち自国市場に新規に導入されるケースを考える。自国市場には既存の自国製品が販売されている。自国の消費者は自国製品と外国からの新製品のどちらを買うかの選択を行う。消費者は消費者余剰を比較して購入を決めるが、消費者余剰が等しいときには外国製品を買うと仮定する。この仮定により、外国製品の価格が十分に低くなると、消費者はすべての需要を自国製品から外国製品に切り替えることが起こる。このことは外国企業の直面する需要曲線が椅子の形をしていることを意味する。 平成20年度においては、外国企業の本国での市場構造を考察する必要がある。輸出先市場において輸入品を独占的に供給する外国企業が本国市場で完全競争的企業であるとは考えにくい。寡占市場を考えるのが自然であろう。寡占市場ではクルノー競争あるいはバーとラン競争が行われるとするのが単純な分析方法である。それぞれを試してみて、19年度に得られた椅子形の需要曲線を利用することができるかを検討する。そうして、企業の利潤最大化行動により、自国市場輸出からの利益が非常に小さくてもよいと輸出企業が考えることを示すことができれば、製品が安売りされることになる。
|