研究概要 |
学会発表「汚染削減投資のタイミングと不可逆性」においては,Pindyck(2000),wirl(2007)(いずれもResource and Energy Economicsに発表された論文)などの先行研究を拡張して,一般化した枠組で不確実性,不可逆性の有無によって分類される4通りの場合について最適なタイミングを比較した.モデルにおいては環境汚染の被害パラメータが不確実性をもち,汚染削減のための投資費用がサンクコストになるという仮定をおいている. 最適な決定は,不確実な被害パラメータがある値(臨界値)を超えたときに排出量を0にするというものである.不確実性が存在しない場合,投資が可逆的であっても不可逆的であっても臨界値は同じであった.しかし不確実性が存在する場合には,不可逆性の影響があり,投資が不可逆的であるときの臨界値が大きいという結果を得た.つまり投資の不可逆性は臨界値を上昇させる効果をもつが,この影響は不確実性に依存する.現在大きな議論の対象になっている気候変動など不確実性の大きな問題については,政府は社会の変革をともなうような不可逆性の強い政策の実施には慎重になるべきであるという示唆が得られる. 図書は2008年6月に南京大学で行われた国際シンポジウムのプロシーディング(予稿集)であり,研究代表者がシンポジウムで報告した論文が掲載されている.報告内容については昨年度の科学研究費補助金実績報告書に詳述したので割愛する.
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