本研究は不完備な不動産市場がいかなるタイプの市場を形成し、不完備さによる社会的コストがどの程度かに関する理論的、実証的なモデルを構築して、不動産市場の整備の在り方を検討するものであり、平成19年度はその基礎となる以下の理論的、実証的な研究を行った。 (1)理論的研究 住宅市場に関して探索市場(登録市場)かオークションかの各主体の選択について理論的に整理した。特色は各主体の留保価格(取引の基準とする価格)を内生化し、競争条件によってそれらが変化して各主体の市場選択に影響を与えることを明示していることである。分析では競争が不完全なほどオークションが成立しやすいこと、留保価格が高い売り手はオークションより探索市場に参加したほうが比較的有利であり、落札確率から留保価格が低い買い手はオークションに参加しにくいことぶ、理論モデルによって明らかにされた(成果は学会で発表するとともに、現在査読論文を投稿中)。 (2)実証的研究 関東財務局の競売データを用いて、オークションで成立する落札価格と登録市場で成立する推定取引価格の関係を分析した。それによればオークションの落札価格は推定市場価格の0.87倍であった。また、比較的効率的であるといわれるアメリカの住宅流通市場(ビバリーヒルズ、サンタモニカ)についてデータを収集して滞留期間と登録価格(理論取引価格に対する登録価格の比)の関係を計量的に分析した。 なお、補足的に非住宅市場を分析するために市場をリードするJ-REITの投資行動に関して実証的・理論的な研究も行った。
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