本研究は不完備な不動産市場がいかなるタイプの市場を形成し、不完備さによる社会的コストがどの程度かに関する理論的、実証的なモデルを構築して、不動産市場の整備の在り方を検討するものであり、平成20年度は平成19年度の分析結果を踏まえて理論的、実証的な研究を行った。 (1)理論的研究 不完備な不動産市場に関して探索市場(登録市場)かオークションかの各主体の選択について理論な分析をさらに進めるとともに、住宅流通市場における仲介業者と売り手または買い手の間のエージェンシー問題を検討して、最適契約の在り方を検討している。そこにおいて買い主との報酬契約では取引価格が低くなるほど報酬が高くなるようなインセンティブ報酬を、売り手との報酬契約では、登録価格を高くし取引価格を高くしようとするほど、探索努力を行うほど報酬が高くなるようなインセンティブ報酬を示唆している。(成果は学会で発表するとともに、現在査読論文を投稿中)。 (2)実証的研究 裁判所の競売データを用いて、オークションで成立する落札価格と登録市場で成立する推定取引価格の関係を分析し、オークションの落札価格の質に関する感度(弾力性)が入札者数を通じた効果があることから、一般市場の取引価格のそれより高いことを明らかにした。また、アメリカと日本の住宅流通市場についてデータを収集して滞留期間と登録価格(理論取引価格に対する登録価格の比)の関係を計量的に分析した。
|