研究概要 |
1.“The Buck Stops Here: Allocation of Decision-Making Authority with Principal's Reputation Concerns" 国家を運営する政治家や企業を経営するCEO(プリンシパル)は,意思決定を官僚や部下(エージェント)に任せずに,過剰に自身で行う傾向がある.本研究では,プリンシパルが外部に対する評判を考慮するような状況を想定する.政治家ならば選挙での再選, CEOならば労働市場での評判を考えればよいだろう.そして,たとえエージェントの方が意思決定についてより優れていると考える場合でも,評判を考慮するプリンシパルは過剰に自信で意思決定を行うことを理論的に説明する.通常,外部は意思決定の結果は観察できても,それを誰が行っているのかは観察できない.けれども,外部がプリンシパルによる意思決定を信じ,しかも適切な意思決定が行われているならば,プリンシパルの評判は高まることになる.'The buck stops here(責任は自身にある)'という言葉に象徴されるように,プリンシパルは自身の意思決定を外部にアピールするためにこそ,適切なタイプのプリンシパルでさえもが過剰に意思決定を自身で行うようになる.(これは,適切なタイプこそが意思決定に自信があるからともいえる.) 通常のプリンシパルエージェントモデルでは,エージェント側の評判への関心を考慮することが多いが,本研究ではプリンシパル側の評判への関心を明示的に取り入れ,それが意思検定の権限の配分にもたらす歪みを明らかにしたことに意義がある.
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