(1)国際商品取引が賃金に与える影響 日本の23製造業について、外国からの仕入(アウトソーシングの代理指標)と国内労働者の賃金の関連を、1994年から2003年までの期間で調べた。その結果、外国からの仕入れが増加すると、ほとんどの産業で高卒の労働者の賃金が低下し、大卒の労働者の賃金が上昇することがわかった。これは、日本が外国にアウトソーシングをするのは単純労働を多く必要とする製造工程であることを意味する。また、外国からの仕入れが増加すると、若年労働者の賃金は低下し、高齢労働者の賃金は上昇する。これは、日本企業のアウトソーシングによって若年労働者への労働需要が減少することを示唆する。各産業に属する企業は従業員数の大きいグループと小さいグループに分けたが、両グループで同じような結果となった。 (2)国際金融取引が賃金に与える影響 投資収益率の決定は、投資国の特性だけでなく受入国の特性にも依存する。また、直接投資は間接投資と比べて企業間の経営統合が進み、経営資源がより多く相手企業に移転するので、投資収益率は高くなると予想される。これらのことを経済協力開発機構(OECD)に属する13カ国間の直接投資、債券投資、株式投資から検証した。2001年から2006年までのデータから2国間収益率を計算すると、投資収益率の決定には投資国・受入国双方の要因が影響しており、かつ直接投資は収益率が高いことが確認できた。投資収益率が高いということは投資受入国の限界生産物価値が高く、賃金も高いということを意味するので、この結果はどの国からどのような形態で投資を受け入れるかで受入国の賃金変化が異なることを意味する。
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