我が国では近年、新しい医療計画のもとで医療機関の機能分化と連携が推し進められている。そこで、医療機関の機能分化・連携が、地域の医療サービス生産性に与える影響について実証的に分析した。 当初の計画では、患者にとって所有形態の異なる病院のサービスが完全代替かどうかについての実証分析を予定していた。しかし、近年のデータをみると、新しい医療計画の影響が非常に大きく、所有形態の異なる病院が、それぞれ異なる機能に割り当てられていることも多く、所有形態の異なる病院に対する患者の選好を直接比較することは困難であった。そこで、医療計画の影響を明確にするため上記の研究を行った。 本研究で対象とした生産性変化は、個々の医療機関の生産性でなく地域全体での生産性の変化である。というのも、各医療機関を急性期入院、慢性期入院、外来など特定の機能に特化・分化させた場合、機能分化前には無かった新たな問題が生じる。患者の全治療過程を通して、複数の関係医療機関が治療をコーディネートするという問題である。そしてコーディネートが円滑に行われない場合には、個々の医療機関の生産性は向上しても、全治療過程を通してみると、かえって生産性が低下してしまう可能性もあるのである。 実証分析の結果、医療機関の機能分化・連携が進む前後での、地域の医療サービス生産性変化には大きな地域差が認められた。連携の良否が、地域差の原因となっていることが考えられる。しかしながら、生産性変化の原因を特定して行くには、がん、脳卒中、心不全など特定のサービスに対象を限定した上で、コーディネーションの指標と生産性の関係などを分析することが必要である。
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