非正規労働の増加が社会にどのような影響をもたらしているのかについて研究分析した。また、それに対してどのような支援が社会に存在するのか、非正規労働者を支援している団体を訪問し、聞き取りをおこなった。韓国では、政権が交替し、2007年度に施行された非正規労働者に対する保護法の改正案が国会に提出された。その取材をおこなうとともに、07年の保護法がどのような影響を労働市場や社会に与えたのかについて調べた。 日韓ともに、この10年間で非正規労働者が増加するとともに、子育てをしている勤労世帯の所得が低下している。その結果、子供の貧困問題が顕在化している。非正規労働者だけでなく、正規労働者の所得が減少している。解雇は正規社員にも及んでおり、また、非正規労働者だけでなく、正規労働者も含めて、働き盛りの世代の雇用が劣化していることがわかった。 非正規労働の増加の要因と社会制度との関連についてみると、韓国よりも日本において伝統的な男女の性別役割分業が、税制度や社会制度あるいは雇用慣行に反映されている。非正規労働者は世帯主に扶養されているものという前提で、社会保険や雇用保険制度などへの適用が義務づけられていない。それが非正規労働者を雇うコストメリットとなって、非正規労働者の増加となっている。 他方、韓国の場合も非正規労働者は社会保障制度に加入していない者が多いが、それは雇用形態間の差よりは、企業規模による差が大きく影響している。このように、非正規労働の増大という現象は、日韓で共通であり、その要因も共通しているが、社会システムの違いによって、社会への影響は異なることがわかった。
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