本研究は、消費の外部性-他人や過去の自分の消費水準が自身の効用に与える影響-に関する-連の研究成果を踏まえ、そうした外部性の存在が、人々のどのような行動に作用し、その結果として今日指摘されているような地域間格差にどのような影響を与えるかに関して、理論と実証の両方の側面から明らかにしようとするものである。本年度は、先行研究の検討と現状把握に努めた。 理論的側面においては、先行研究サーベイと理論モデル構築についての検討を行った。消費の外部性は、最適成長モデルの枠組みの中では、量的効果はあっても質的効果はないと考えられる。したがって、これまでのモデルでは、地域間格差の存在を説明することはできるが、成長率の違いや地域間格差の動向について説明することはできない。そのため、利子率あるいは時間選好率と消費の外部性とを関連付けることが必要である。 実証的側面では、一般的な統計データを用いて消費の外部性を検証する方法論を検討し試算的な分析を行った。第一は、空間的相関モデルによる消費反応関数の推定である。各都道府県の消費時系列データを用いた推定の結果、特に自地域の水準とかけ離れた地域の消費に対して有意な反応を示す県が多く、中でも東海や中国地域でその傾向が強いことが明らかとなった。第二は、Subjective Well-Being(SWB:主観的幸福感)の要因分析の応用である。日本の13地域×12年間のパネルデータを用いた推定からは、相対的な消費水準(特に東京圏との比率)が高い地域ほど、SWBが高いことが明らかとなった。 以上から得られた理論および実証研究の成果は、ディスカッションペーパーにまとめて公開するとともに研究雑誌への投稿と学会での発表を予定している。
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