研究課題
本研究は、消費の外部性-他人や過去の自分の消費水準が自身の効用に与える影響-に関する一連の研究成果を踏まえ、そうした外部性の存在が、人々のどのような行動に作用し、その結果として今日指摘されているような地域間格差にどのような影響を与えるかに関して、理論と実証の両方の側面から明らかにしようとするものである。本年度の成果は以下のとおりである。理論的側面においては、輸送費などを考慮し、消費外部性が経済成長に与える効果について理論モデルを構築し分析を行った。輸送費を考慮に入れた場合、消費の外部性の存在が、最適成長モデルの枠組みの中で、複数均衡をもたらす可能性があることが示された。また、それゆえに、消費の外部性は量的効果のみならず、質的効果を持つと考えられる。地域間格差の存在をこのように消費外部性と関連付けて説明できたことがこの理論研究の特徴である。今後は、利子率あるいは時間選好率と消費の外部性とを関連付けることも必要であろう。実証的側面では、Subjective Well-Being(SWB:主観的幸福感)データを用いて、日本の地域間における消費外部性の存在を検証した。分析結果から、特に東京の消費(もしくは所得)水準の上昇が、他地域の幸福感を低めることが明らかにされた。また、そのようにして幸福感の下がっている地域の人々は、将来への貯蓄よりも現在の消費を重視する傾向にあることも確認された。日本の地域間における消費外部性の検証は、本稿が初めてであり、今後は他の都市部からの影響を加味するなど、さらなる拡張が望まれる。
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Graduate School of Economics Kyoto Sangyo University, DISCUSSION PAPER SERIES No. 2008-04
ページ: 1-26