研究概要 |
患者の受診意志決定過程を医学的・経済学的にモデル化したものは他にない.類似したものとしては,医療サービス消費の経済学的モデルとして,消費者の効用を,健康水準とそれ以外の財の消費量で表したグロスマンモデルがある.それは医療は健康という目的を達成するための派生需要であり,患者(消費者)の効用が,医療サービスの消費水準ではなく,実現された健康水準にあるということを示したという点で,画期的なモデルである.しかしあまりに抽象的なモデルであるため実証することは非常に困難である. 医療経済学研究において,受診以後の治療内容などの分析が主としてなされてきているが,受診以前の受診意志決定過程を分析した研究は今までになかった.これは臨床医師の経済学研究者がほとんどいなかったため,そういう点に着目するという発想がなかったためである.臨床医師でもある私の臨床の現場から出てきた疑問点を,経済学的にモデル化したものを診療科・ヘルスリテラシーレベルごとに分析し,今後の医療需要の姿を詳細に検討したい. 一般医療機関受診者にアンケート調査を複数施設で複数回実施した.離散選択モデル,コンジョイント分析などの方法で受診意志決定過程を経済学的に明らかに分析している途中である. 診療科・疾病別に出来るだけ数多くの症例を集め,疾病ごとの自覚症状と受診行動との関係やヘルスリテラシーの受診行動に与える影響についての詳細な検討を行いたい. デンマークのコペンハーゲンでIHEA(国際医療経済学会)が行われ,料収集も行った. 国内の学会・研究会での資料・情報収集.医療経済研究機構,医療科学研究所などでの資料収集も行った.
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