平成19年度の研究では、介護保険と医療保険の選択に関する分析において、データ入手、データ加工、実証分析、論文執筆を行った。まず、ある県のA病院に入院している患者の1999年4月から2006年3月までの個票データを入手し、実証分析を行う。データからは、性別、入院時の年齢、入院回数、寝たきり度、痴呆度、要介護度、身体障害者の障害程度(等級)などの情報が得られる。よって、これらを説明変数に用いて、入院患者の生存率、入院患者の入院日数分析、介護保険と医療保険の選択要因を実証分析した。 我が国では「社会的入院」が高齢者医療における大きな課題であり、実に30年以上にわたり、取り組んできた。こうした背景を踏まえて、厚生労働省は2006年7月から本格的に療養病床の再編を決定した。再編では、介護保険適用の療養病床(介護療養病床)が廃止され、医療保険適用の療養病床(医療療養病床)が削減される。 この再編の目的の一つとして、医療療養病床では医療の必要性が高い患者を受入れ、医療保険で対応することをあげている。療養病床への入院は、介護老人保健施設をはじめとする福祉施設に入院した場合と比較して、入院患者一人あたりに支出する保険給付費が高額になる。よって厚生労働省は、今回の療養病床の再編で、医療の必要性が高い患者を医療療養病床へ、そして医療の必要性が低い患者は介護療養病床ではなく、在宅やその他の福祉施設で対応するように促す政策を行ったのである。 平成19年度の研究においては、入院患者の現状、介護療養病床と医療療養病床の患者の属性などを実証分析し、現段階での療養病床の実情を明らかにした。さらに、今後実施される療養病床再編により、介護・医療の現場に起こりうる状況を予測した。
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