研究概要 |
本研究の目的は,電力,電気通信,都市ガス,鉄道等のネットワーク産業におけるオープン・アクセス環境下でのインフラ設備の有効利用とインフラ建設や競争促進の可能性を分析することである.また,それらを通じて,財・サービスの安定的供給と小売料金下落が達成されるためには如何なる制度設計が必要であるかを経済理論モデルで分析する. 本年度は次の2つの研究成果を得た. 1.昨年度,作成した理論モデルをより発展させた.発展の内容を具体的に述べると,参入企業が多様な参入戦略(接続,バイパス,垂直合併)を用いて参入する理論モデルを「バイパス設備の存在の有無」という形でまとめ直した.そのことにより,理論分析から得られた結果がより理解しやすくなった.また,分析における均衡の特徴づけが完全な形で表現できた. 理論分析では,バイパス設備の存在が生産の効率性を上昇させる場合であっても,社会厚生の側面から見て,それが過剰使用される状況があること,またそれがいかなる状況であるかを明らかにした.さらに,バイパス過剰使用が発生する原因は,既存事業者の戦略的なインフラ投資誘因であることが判明した. 2.2年間の研究における分析成果を現実の政策に生かすために,政策提言的な論文を作成した.それは特に都市ガス事業を対象としたもので,「託送供給とガス・パイプライン整備」という論文で公表した.そこでは,日本におけるガス・パイプラインというインフラを整備させるために,託送料金設計や託送供給義務の免除,事業者間提携のあり方について論じた.
|