研究概要 |
本研究の目的は市場のリスクや技術・生産上のリスクに直面する寡占企業の企業組織や企業統治(コーポレート・ガバナンス)システムの違いが、この企業の競争戦略を通じて寡占市場での競争と経済厚生にいかなる影響を及ぼすのかを理論的に明らかにすることである。そこで、本年度は、企業統治と寡占市場競争を扱った先駆的研究であるBrander and Lweis(1987)を異なるタイプの企業統治をもつ寡占企業がCournot競争するケースを分析し、過去の日韓IT企業の市場競争での事実をサポートするとも解釈できる次のような結果を得た。 (1)Brander and Lweis(1987)モデルを用いて、1社が株主価値最大化企業、もう1社が借入価値最大化企業であるようなCournot複占市場において、両企業が借り入れにより費用削減投資を行ったときの均衡を導出し、均衡では株主価値最大化企業のほうが、借入価値額最大化企業よりも生産量は大きいことを示した。すなわち、株主価値最大化企業のほうが借入価値額最大化企業よりも投資資金の借入調達により積極的であることを示した。 (2)また、両タイプの企業の借入額が同額ならば,ちょうど借入金額を回収できる限界費用上限は、株主価値最大化企業のほうが借入価値額最大化企業よりも高い、すなわち株式価値最大化企業のほうが借入価値額最大化企業よりも技術的により劣っていても借入金の回収が可能であることを示した。
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