研究概要 |
本年度は、企業統治や資本構成が寡占競争に与える影響の分析のベンチマークとしてBrander and Lweis(1986)モデルを用いて、極めて極端なケースであるが、1社が株主価値最大化企業、もう1社が借入価値最大化企業であるCournot複占市場モデルにおける均衡の導出とその性質の吟味を試みた。その結果、第1ステージで両企業が同時に費用削減投資資金の調達の資本調達構成を決定し、その後Cournot数量競争をする2ステージゲームを考え、部分ゲーム完全均衡の性質を吟味した結果、第1ステージを所与とした第2ステージの部分ゲームでは、異なる企業統治・資本到達構成をもつ企業が存在する複占市場を考えても、 (1)「第1ステージでの借入額を所与として、株主価値最大化企業である企業1の均衡生産量は、借入価値最大化企業である企業2のそれを常に上回る」 (2)「仮に第1ステージでの両企業の借入調達額が等しい場合は、ちょうど借入金額を回収できる限界費用上限は、株主価値最大化企業1のほうが借入価値額最大化企業2よりも高い」 (3)均衡では、「各企業の借入額が微小に増加したとき、各企業の均衡生産量の微小変化は自己効果は正、交差効果は負である」 (4)全体ゲームでは「第1ステージゲームでは、株主価値最大化企業1は借入を行わない」 (5)「第1ステージゲームでは、借入価値最大化企業2は最大限度まで借入を行う」 (6)(4),(5)の結果は「株主価値最大化企業のほうが、借入価値最大化企業よりも積極的に多くの借入を行って、他社へ自社の優位性をコミットする」という、Brander and Lweis(1986)の結果と全く異なることを明らかにした。また、公表論文とはなっていないが別の分析では、第1ステージに企業が自らは「株主価値最大化企業」になるのか、「借入価値最大化企業」となるのかを選択する3ステージゲームを考え、部分ゲーム完全均衡の性質を吟味し、一定の結果を得ている。
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