研究概要 |
本研究は2本の柱から成っている。第1に、発展途上国の経済開発にバイオテクノロジーを利用するための施策を考えること、第2に、バイオテクノロジー分野の特許公報や研究論文というテキストデータをマイニング(テキストマイニング)し、バイオテクノロジーの将来の進化の方向とタイムスケジュール(ロードマップ)を知ることである。第1,2年目の研究は前者に力点が置かれたが、第3年目の本年度は後者に力点が置かれた。とりわけ重点が置かれたのは、コンピュータ(統計解析手法)と人間との協働による、実践的で有意味なテキストマイニング手法の獲得であった。従来のテキストマイニング研究は、統計解析手法の高度化自体が自己目的となっている場合が多く、結果として社会的課題に対して回答を与えてくれることは期待できなかった。この現実から脱却して、途上国の経済開発という極めて実践的な課題に有意味な回答を与えてくれるテキストマイニング手法の提示を求めて模索を続けた。その結果、統計解析手法(多変量解析、グラフ理論)と人間との協働を可能にするため、(1)「単語セット」作成、(2)過去の知識の導入という二つの手法に行き着いた。この有効性実証のために、本来であればバイオテクノロジー分野の特許を対象として研究すべきであるが、しかしバイオ分野は特許の分析が難しいという性質があるため、まずバイオ同様に途上国の経済開発にとって重要な太陽電池を選び、研究した。その結果、上述のテキストマイニング手法は有効であることが分かった。その成果は菰田文男等『テキストマイニングと技術経営』(ミネルヴァ書房、仮題)として平成22年に刊行予定である。 以上のような今年度の研究は、テキストマイニングをベースとして単に途上国の経済開発にとどまらず、またバイオ分野にとどまらず、より広い観点からのテキストマイニング研究の重要性を知らしめた。したがって、さらに本研究を発展敵に継承して、平成22年度科学研究費補助金「特許公報のテキストマイニングによる選択と集中戦略の立案に関する研究」として申請中である。
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