近年、我が国においても、財・サービスにおける付加価値の創造に向けて、文化・創造をキーワードとした政策論が活発になっている。国際社会においても、成熟社会であるヨーロッパ、特に、フランスでは、先駆的に、文化の経済的生産性の推計や、社会問題解決への寄与などの分析、文化と発展の最適化に向けた各種経済モデルの提案が開始されていることから、本研究では、日仏比較研究を通じて、芸術家や芸術団体、及び文化遺産(主として有形の文化財、博物館)といった文化資本(Cultural Capital)を用いた地域経済政策(経済効果、雇用制度、地方分権化)、文化施設・遺産などのマネージメントを中心とした産業基盤の構築のために、(1)文化資本と市場経済とを如何に調和させるか、また、(2)付加価値を持った産業基盤を如何に創出するかについて、検討、分析を行った。 特に、平成20年度は、社会に存在する多様な文化資源を導入することが出来るような、新しい地域経済モデル「文化-経済モデル」の構築に向けて検討を行った。具体的には、平成19年度に行った事例調査の結果に基づき、演劇フェスティバルの地域への社会的、経済的影響について定量的・定性的な分析を行うとともに、文化資本の活用により社会的貢献が持続的に行われていくための要件を探った。また、フランス側協力者により行われたルーブル美術館活動の経済的な側面からの分析について、日本において特別セミナーを開催、比較検討した。さらに、これまでの研究成果の一部を、ナポリ大学、及び上海幹部学校における国際会議で発表した。今後は、この2年間の研究期間で得られた知見をとりまとめ、論文等として発表することとしている。
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