研究概要 |
国境を越えた地域経済統合が進む過程において地方間経済格差が縮小するものか,拡大するものか,特に,その過程に及ぼす多国籍企業の役割,意義を分析する本研究は,理論的,実証的に問題にアプローチすることが必要である。そのため,以前受託した科研費で整えた研究環境のさらなる向上をまず図った,即ち,PC設備などを更新し,最新の研究動向を追うために文献,統計資料をそろえ,それらを整理した。そして,9月以降は聞き取り調査を進めた,即ち,欧州ではEU関連諸機関,欧州の経済団体,労働組合に対して,また国内では欧州で活発に事業を展開しながら,国内でも工場の再配置を進めている代表的企業の幾つかを訪問し,インタビューを行った。 上記の研究成果の一部として,次ページの11.研究発表にある論文を発表した,本論文では,資本主義経済が市場と企業双方を分業形成システムとしながら発展してきたことを整理し,両者が現在国境を越えて分業関係を展開する中で生じさせている歪みを指摘した,本論文での分析は,今後の研究の理論的基盤を成し,ここからさらに本研究テーマの実証的,政策的分析が進められる。 欧州,並びに,国内での聞き取り調査において,地方間経済格差に対して,多国籍企業が大きな影響を及ぼすことが指摘された,しかし,その評価は立場によって異なり,企業,受入地方側からはポジティブな評価が多く,他方,労働組合,送出し側からはややネガティブなものであった,さらに,欧州ではネガティブな影響を最小化しようとする政策対応がEUレベルで図られていることも明らかとなった,次年度ではこれらの点を整理し,成果に結び付けていく予定である。
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