研究概要 |
国境を越えた地域経済統合が進む過程において地方間経済格差が縮小するものか,拡大するものか,特に,その過程に及ぼす多国籍企業の役割,意義を分析する本研究は,理論的,実証的に問題にアプローチすることが必要である.そのため,最新の研究動向を追うために文献,統計資料をそろえ,それらを整理した.また,積極的なインタビュー調査や研究者との交流も進めた.即ち,欧州の在日直接投資誘致機関にインタビューを行い,欧州経済統合,経済地理学の最先端の研究者であるM.Jovanovic(国連欧州経済委員会)教授と研究に関する意見交換を行った.更に,イギリスとフランスの工場立地について,その雇用分布も含めたデータベースを作成した. 上記の研究成果の一部として,次ページの11.研究発表にある編著論文(査読付き)を発表した.本論文では,EUにおける多国籍企業の展開とそれに直面したEUの政策対応について論じた.即ち,単一市場の下で自由に立地場所を選択し,移動する多国籍企業の動向を確認しながら,そのことがもたらす域内の軋轢を緩和するための労働・社会政策的な方策が,EUレベルで進められていることを示した.本論文の分析は,昨年度の基盤の上に,本研究テーマの実証的分析を進めたものの一部である. 上述のような研究を進めてきている本研究代表者は,国内外で評価されるようになってきている.国内では,11.研究発表にあるように,学会でのコメンターを求められた.更に,研究・意見交換を行ったJovanovic教授からは,氏が編者となる図書において,日本企業のEU内における展開についての執筆依頼を受けた.これらのことは,本研究内容の国際的水準,重要性を示すものである.
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