研究課題/領域番号 |
19530237
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小塩 隆士 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (50268132)
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研究分担者 |
菅 万理 神戸大学, 経済学研究科, COE研究員 (80437433)
安岡 匡也 神戸大学, 経済学研究科, COE研究員 (90437434)
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キーワード | 社会保障 / 出生率 / 年金制度 / 賦課方式 / 積立方式 / 確定拠出年金 |
研究概要 |
本研究は、個人・企業・政府の望ましい社会保障負担配分の考察がほとんど行われていないことに着目し、持続可能かつ公正な負担のあり方について、理論的・実証的な考察を行うことを目的とする。本年度は、個人と政府間の望ましい関係について理論分析を進め、大きな成果を得た。 社会保障制度を持続可能なものにするためには出生率をある程度の水準に維持する政策が重要であるが、そのためには、どのように財源を徴収し、どのような形で個人に還元すべきかを明らかにした。具体的には、どのような育児支援政策が、他の政策と比べて望ましいかを示した。また政府の年金の制度設計において、賦課方式年金システムと積立方式年金システムのどちらが個人にとって望ましいかを明らかにした。通常、人口成長率が利子率よりも高い場合、個人にとって年金の収益率は賦課方式の方が積立方式よりも収益率が高いので、賦課方式の方が望ましい。しかしながら、不確実性が存在する場合は、常にこれが成立するとは限らないことを明らかにした。資本蓄積の不確実性や労働人口の不確実性が存在することにより人口成長率や利子率に不確実性が存在する場合、例え平均人口成長率が平均利子率よりもかなり大きいとしても、賦課方式は積立方式よりも望ましくないという結果を得た。 一方、実証分析については、企業が社会保障に介入することの、個人の福利への影響について成果を得た。社会保障機能の一部を企業が担うことは企業規模による格差を伴う。特に小規模の企業に勤務することによって、所得などの格差に加え、必要最小限の社会保障受給についても不利益を被る可能性が高く、社会保障の一端を企業に任せることについて重大な問題があることを確認した。 今後は、理論分析と実証分析から得られた結果を照合し、最終的には個人・企業・政府3者の望ましい負担配分についてシミュレーションを用いた考察を行う予定である。
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