申請書で記載したように、本年度は(1)時系列構造変化検定のための基本データの収集と整備、(2)小標本分布での検定が可能な漸近分布シミュレーション、(3)シミュレーションによる分析モデル改良と比較分析のための方法開発の三点を主な作業としていた。 (1) 日本のデータは日経NEEDSを中心に、世界経済のデータはIMFおよびADBを中心に収集し、基礎分析に使用できる環境を整備することに重点が置かれた。また、アジア産業連関表の3時点間の収集も行い、実際の分析に使用できる環境が整いつつある。 (2) 幸いなことに、小標本とは異なり、日本企業に関する多くの標本データが入手可能であった。そのため、それを使用したミクロレベルの分析として、日本企業のガバナンス問題を研究し、その成果を春の学会で報告した。また、t分布を用いた小標本検定の修正版を考案し、マジソンの世界長期統計に適用した研究を行った。だが、この成果はマジソンの統計そのものへの信頼性と、検定の適合性などの点で、投稿した雑誌編集委員会からリジェクトとなったので、現在改訂版を考案中である。 (3) アジアのIO表と計量モデルと用いたシミュレーション分析を、韓国を手始めに開始している。本年度は、韓国のエネルギー需要関数の推定を行い、他方でエネルギー価格変動に関する影響のシミュレーション分析と組み合わせ、発表に向け準備を進めている。 引き続きIOモデルと計量モデルを中心に、世界経済の相互依存性と構造変化の問題を検討していくが、当面の焦点として世界経済の物価統計の産業別比較を足掛かりにしながら分析を行っていく予定である。現在の取り組んでいるテーマとしては、エネルギー要素問題、生産性への影響問題、物価の変動問題などが中心となっている。これらをマクロ集計量及びミクロデータで多面的に応用していく。
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