本年度は、経済における構造変化の具体的な問題の分析と、また、マクロ的変化の状況下でのミクロレベルでの意思決定の在り方とそのパフォーマンス分析を中心に研究を行った。この分析は、世界的に進行している経済状況の変化を個別的問題から明らかにし、また、経済システムという全体状況変化がミクロな視点からどのように見え、また、どのような個別的な意思決定が経済パフォーマンスに有効であるのかを明らかにする点で重要である。 具体的には、以下の4点の研究を主に進めたが、一部はなおその途上にある。 (1)国際依存度とその変化の分析として、原油価格の高騰がアジア経済、とりわけ日本や韓国にどのような影響を与えるのかをIOモデルと計量モデル(需要関数推定)により分析し、供給サイドで価格により敏感に反応する韓国と需要サイドで敏感な日本の対照的な特徴の結果、最終的には同程度の国内経済への影響が出るとの結果となった。 (2)経済構造の変化の在り方とその頑強性について、資源価格の変化が当該経済システムの均衡状態にどのような影響を与えるのかという問題を、北京(メガ都市レベル)及び日本(国レベル)の一般均衡(CGE)モデルで分析を行っている。この分析は今なおプログラム開発中である。 (3)個別的なミクロ分析として、主に、日本企業のパフォーマンス分析とガバナンス問題の構造分析をパネル・データで行い、国内経済の変化にどのように対応しているのかを分析し、オーナー企業の変化への対応が、生え抜き役員企業やメインバンク依存企業の対応に比べて、より迅速であるという結果を得た。この結果は、欧米経済で多く確認されてきた企業パフォーマンスとガバナンスとの関係だが、日本企業においても観察される事実であることが分かった。 (4)補足的に、経済変動のさなかにおける企業の意思決定の在り方を、実際の金融機関の元専務からのロング・インタビューによって考察を行った。 以上の分析を踏まえ、今年度は総まとめの作業とその成果発表を行う予定である。
|