本研究課題の最終年度に当たる本年度は、これまでの研究蓄積で見えてきた研究の方向性の新たな拡張と研究成果の公表及び取りまとめ作業を行ってきた。 経済における構造変化の具体的な問題の分析として、本年度は主に水資源価格の変動が経済全体にいかなる影響を与えるのかという問題を、水資源の不足で悩んでいる北京市及び中国を取り上げ、CGEモデルで分析してきた。 この問題は、本研究課題が掲げていた目的のうち、「各都市の変化要因に占める外需(移輸出入)依存の高まり、移輸出による誘発効果の増大の実態」と「移輸出入変化における代替の弾力性とその変化の実態、波及スピードに関する分析」に該当する応用研究であった。 更に、目的「一国での経済政策が世界各国に与える影響、相互依存性の増大分析」と「世界経済におけるサービス化・IT関連化の進展と途上国における工業化キャッチ・アップへの影響」を分析するために、中国、インドネシア、ラオスなどを個別の事例として分析を行った。中国では江西省の産業連関と地域発展の不均等問題を産業連関モデルで分析し、インドネシアは都市と地域における児童労働の問題を解決するために有効な経済政策の効果分析を行い、ラオスでは開放経済下における開発援助政策と外資導入との効果の比較分析と、外資導入の通貨及び物価に対する影響と歪みの程度について分析を行った。 全体として、世界経済全体の構造的変化だけではなく、アジアを中心とした個別の国、都市、そして地域において急速な発展と構造変化が起きており、同時に貿易や外資導入による相互依存状況と発展の不均等がもたらされている実際を分析することができた。
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