研究概要 |
『バンドパスフィルタを用いた景気循環に関する研究』という研究課題のもと,(研究1)わが国の代表的な2つの景気先行指数のパフォーマンスを比較することを目的とした研究,(研究2)日米間の景気変動の連動性に関する研究を中心に研究を行った。(研究1)について:この研究でパフォーマンスを比較した代表的な2つの景気先行指数のうちひとつはOECD(経済協力開発機構)による先行指数であり,もうひとつは内閣府による先行指数である。これらの指標はともにわが国の景気の先行きを予測するためによく用いられる指数である。景気の先行きに関してこれらの指標が相異なる予測を示した場合,我々はその結果をどう評価すればよいのであろうか。この研究では,この問いかけに対するひとつの答えを提供することを目指している。ここまでの分析により得られた主要な結果は,次のようなものである:(a)2つの先行指数(の6ケ月変動率)は,両者の構成系列数も計算方法も異なるにも関わらず,転換点の位置はほぼ同じである。(b)わずかな例外を除いて,転換点を推定する手法に関わらずOECDのCLIの転換点は,内閣府による先行CIの転換点の左に位置している。(c)OECDのCLIが内閣府のCIに先行する期間は平均的に1ケ月強である。(研究2)について:日米間の景気変動の連動性に関しては,「米国がくしゃみをすると日本は風邪をひく」というように表現される。しかし,これまでのところ,この表現と相反する実証的結果がいくつかの論文で報告されている。この研究では,近年新しく提案された景気循環の連動性を量る指標を使用してこの表現の妥当性を再検討する。これまでの研究で,目米間の景気連動性は安定的なものではないという結果を得た。来年度は,これら2つの研究を完成させ研究成果を広く還元していくことを目指す。
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