資源問題にかかわる分野では、『パイプラインの政治経済学』を法政大学出版局から上梓した。ロシアだけでなく、中国やインドなどについても分析対象とするもので、石油と天然ガスのパイプラインに関する総合的な考察をしている。資源問題をパイプラインというネットワーク型インフラを介して分析したといえる。企業レベルでの埋蔵量、生産量の分析を行ったほか、各国別の地下資源所有形態についての分析も行った。ロシアを中心とする15のパイプラインについて、個別に詳しく検討し、その政治経済的問題点を明らかにした。資源ナショナリズムの現状分析も行った。中国やインドの資源戦略についても考察した。軍需産業にかかわる分野では、『21世紀ロシアの軍需産業』を平成20年度に刊行するための準備を進めた(慶応義塾大学出版局および岩波書店のいずれかから出版する内諾を受けている)。軍需産業を分析するためには、軍そのものの改革、安全保障条約などの安保政策、国防発注や武器輸出などについても考察する必要がある。こうした研究を踏まえて、ロシアの軍需産業についても詳細な研究を行った。統一航空機製造コーポレーションをはじめとする統合の動きに加えて、「国家コーポレーション」という新しい経営形態による軍需産業の統合の動きについても分析した。核産業についても考察し、ウラン採掘、低濃縮ウランの生産状況など、世界的に高まっている原発への関心にこたえる研究成果になっている。上記の研究のため、ロシアに2回出張したほか、ロシアの軍事問題の世界的権威、Cooperバーミンガム大学教授とも英国で面談した。いずれの出張においても、資源・軍需産業にかかわる資料収集や専門家との意見交換を行い、研究に大いに役立った。
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