本研究の過程においては、FTA交渉に関わる農業問題資料の収集を進めたが、日韓FTA交渉は周知の通り遅延しており、資料収集には時間を要した。それでも、FTA交渉の背景となる韓国の農業構造等に焦点を当てることで、研究期間内の資料収集は進捗した。日韓FTA交渉下の韓国農業分析を行うことで、今後のFTA交渉の背景が明らかとなったことは、本研究の成果と言える。研究手法としては、現地調査と専門家ヒアリングにより関連の資料を収集し、コメントを反映させながら研究成果を3本のオリジナル論文にまとめ、1本の韓国語論文を翻訳・発表した。また、学会発表を行い研究成果を公開している。 具体的には、訪韓調査によるヒアリングを進め、現地の専門家より意見を聴取した。ソウルの政府系シンクタンクの、韓国農村経済研究院を訪問し、金正鎬副院長(コメ問題の専門家)より、農産物市場の開放問題に関して意見を聴取した。また、金泰坤先任研究委員を訪ね、所得補填直接支払い制のしくみについてヒアリングを行った。加えて、金昌吉環境農業室長に面談し、環境農業直接支払い制度の運用実態についてレクチャーを受けた。 これらのヒアリングの成果は論文「韓国における食糧安全保障政策」、「核実験以後の対北コメ支援と過剰問題」、「韓国の環境農業直接支払い制度」として公刊した。また、2007年9月の日本計画行政学会の全国大会において口頭発表を行った。この他にも、コメ政策の転換に関する鄭英一教授(ソウル大)の最新の論文を翻訳し日本に紹介している。
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