日韓FTA交渉は、第3年度の研究期間中においても大きな進展が無く、依然として交渉は遅延している。その間に本研究では、FTAの動向を注視しながら資料を収集するとともに、「農業問題」に関わる農村実態調査を進めた。また、FTA交渉打開策にも関わって、本プロジェクトの課題の一つである「地域」に焦点を当てた研究を進めた。 「農業問題」については、韓国の農業問題が、国内農家構造の調整問題を反映している点に注目し、近年の農家構造の変化を把握するために、農村実態調査を行った(2009年8月1日~8日)。農村実態調査においては、農家の離農の状況が把握され、農業条件の変化が、対外的な農業交渉に反映されるうる状況にあることが確認された。農業交渉の背景事情が確認されたことは、本調査の成果であり、今後の農業交渉を分析する上では有益な調査であった。本調査による農業動向の把握は、プロジェクト第3年目の成果と言える。 もう一つは、日韓FTA交渉が遅延するなかで、日韓の地域連携が進みつつある点を明らかにした点である。FTAは両国の経済連携に関連して規制緩和を行うものであるが、一国レベルの規制緩和に先んじて、すでに、地域レベルでの規制緩和論議が始まり、地域FTAという言葉も生まれている。本研究プロジェクトでは、特に、日本の北部九州地域の福岡と韓国南部地域の釜山の地域間連携や都市間連携に着目して、両地域・両都市間の、独自の規制緩和政策に関わる動向や構想を検討した。
|