本プロジェクトの最終年度においては、成果を論文にまとめて学会発表を行った。課題は、日韓FTAについて地域問題との関わりも含めて、成果をまとめることであった。当初の目的は、おおむね達成したが、年度途中よりTPP問題が発生し、追加の研究調査を行い、これを成果に含めた。 日韓FTAは、交渉再開の動きが見られるものの、再開への動きは鈍く、その間にも、韓国は、米国やEUとFTA交渉を進め、輸出市場における対日優位性を確保しつつある。日韓FTAについては、国レベルの動きが鈍いなか、福岡・釜山という地域間で経済交流が活発化している。そういう現状を受けて、「国境を越える地域連携」の現状と背景について調査を行い、その成果を、日本計画行政学会で発表した。また、同時期には、東京大学の姜尚中教授より研究報告の依頼があり、東京大学・現代韓国研究センターの研究会で成果発表を行い好評を得た。 ところで、これらの発表を行った直後の9月頃に、経済産業省グローバル経済室より急遽、連絡があり、東京より室長補佐が来福して、プロジェクト代表者を訪問。TPPに関わる相談を受けた。TPPが正式に日本国内で報道される前の時期であった。相談の用件は、TPP交渉に際して、FTAで日本に先行する韓国の農業政策について、専門家の意見を聴取したいとのことであった。本プロジェクトは、政策対応も課題としていることから、近年のFTA対応農政について説明し、併せて政策研究に必要なプロジェクトチームを組織して、新たな科研に申請した。また、執筆依頼を受けて、韓国のFTA対応農政について論文にまとめた。これらは近く公表される。日本のTPP交渉に際しては、韓国の構造改革の研究が、政策対応に寄与すると期待される。本分野の研究は、日本における政策ニーズが極めて高く、今後も、研究チームで検討作業を進める計画である。
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