本研究ではバブル崩壊と失われた10年を、家計の所得不足、といった側面から考察しており、そのなかでも不良債権処理のしわ寄せが家計に生じたことを中心に考察している。 まず2冊の著書において大体の見通しを述べた。なかでもトレンドとサイクルの区別から、トレンドの中期的な屈折を重視する必要性を述べた。80年代と90年代以降では大きく成長率が屈折しているが、それはサイクルの様相にも現れている。 ・80年代以前の安定成長期はいわゆるGrowth Recession、つまり成長が足踏みする時期が不況だが、 ・90年代はちょうど成長の頭を押さえられ、成長率が低下した形となっている。 言い換えると、景気上昇の初速はそれほど変わらないが、後退期には失速しマイナス成長の程度が大きく速い。この点からよりトレンドに依存する割合の大きい家計消費の役割が大きいことが予想される。本研究は日本経済について網羅的に考察するものだが、そのなかで「失われた10年」のさまざまな仮説の比較検討を行っている。
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